この2年間、直まきで散々失敗してきました。
芽の幼いうちに乾燥させちゃって枯らしたり、小さい芽を虫にかじられてそのまま大きくさせられなかったり、そもそも種まきしたはずなのに発芽してこなかったり…
コレを読んでいるあなたも「あーそうそう!」と共感してもらえる項目があるのではないでしょうか?
今回は、そんな失敗経験を踏まえて、直まきを失敗してしまう人はぜひ育苗に挑戦してみては?という話です。
直まき失敗談
直まきの失敗で一番多かったのが「水管理」です。
その1:水管理
畑に種をまきますね。
途中雨が降ったり振らなかったりして、なんとか小さい芽がポツポツと出揃います。
「あー発芽してくれて良かった^^」なんて安心します。
が、その後一向に雨が降らないことがあるわけです。
じゃあ水をあげればいいじゃんとなるわけですが、私の場合、いくつか問題がありました。
- 自然農は基本的に水やりしない原則
- 畑の面積が広くて水やりが大変
- 土質&強風によりすぐに乾く
1つ目は自然農に取り組んでいる人なら一度は聞いたことのある話だと思います。
「日照りが続くようなら水をあげますが、基本は水やりはしません。乾燥するようなら草を厚めにかけておきましょう。」
というやつです。
「日照りが続く」なんて書かれたら、1週間とか10日とかをイメージしちゃいます。
けど、発芽したばかりの時期って3~5日の乾燥でも死んじゃうんです。
「草を厚くかけておく」というのもやりたいんですけど、季節によって1週間に2~3日、風の強い日があるのがうちの畑です。
ですから、せっかく草をかけておいても、全部風で飛ばされちゃうんですよね。
あと、そもそも草がそんなに生えていないというのもあります。
2つ目の畑の面積が広くて水やりが大変というのも大きな問題でして。
畑が乾燥するなら水やりすればいーじゃんと思うかも知れません。
ですが、うちの畑は7,000㎡以上あります。
幅20mほどの畑が350m続いています。
それを水やりする労力たるや…
しかも、です。
畑の途中に蛇口があるので、ある程度の長さまではホースを伸ばせます。
ホースの先にシャワーノズルをつければ水やりもそこそこに楽です。
が、350m伸びているとさすがのホースにも限界があります。
となると、軽トラに数百リットルのタンクを積んでいき、ジョウロに移し替えて水やりすることになります。
、、、何十往復も。
ざっくり計算ですが、幅1.2m×長さ20mの畝が6本あったとします。
畝には2条のまき筋があるとして、
1条20m×2条×畝6本分=240m分です。
1条10mにジョウロで水やりすると、大体3~5杯は必要になります。
すると、
3~5杯×24(240m分)=72~120杯
つまり、6本の畝に水やりするのに、大体100回前後ジョウロに水を汲んで撒いてを繰り返すわけです。
たった6本の畝でコレです。
うちには何十本と畝がありますから、こんなことは現実的でないわけです。
水も勿体ないですし(水道代いくらだよって話です)。
そういうわけで、直まきの最大のネックは水やりだったのです。
その2:オケラ
オケラという虫をご存知でしょうか。
地中に住んでいる虫で、モグラの小さいバージョンみたいなものです。
で、彼らは土中をモグラのように進んでいくんですが、ここに問題があります。
彼らが通過したあと、土中にトンネルができるのです。
そのトンネルが、種まき直後の場所を通過することが多々あるのです。
するとどうなるか。
せっかく発芽して根を張っていたのに、その根の部分にトンネル(空洞)が作られてしまうのです。
すると土が浮いてしまいます。
浮いた土はすぐに乾いてしまいますから、幼い芽に大ダメージを与えるのです。
しかもですよ。
やつら(オケラ)は、何を好き好んでか、種まき用に鎮圧したところにトンネルを作るのです。
これまた自然農の種まきの方法を思い出していただきたいのですが、鍬の背でまき場所を鎮圧しますよね。
ピタッときれいに鎮圧して、そこに種をまいていく。
”わざわざ”そのきれいに鎮圧したところを荒らしていくのが、オケラなのです。
これが直まきが難しいと考える理由2です。
その3:小さい芽をかじられる
種をまいて発芽してひと安心、となったところでやられるのがこれです。
特に、自然農初期の畑で起こることが多いのですが、せっかく発芽した芽をかじられてしまうんですね。虫に。
自然農を始めて時間が経過していれば、周りに他の草(食べ物)が生えているので、野菜ばかりが食われることはないのですが、
自然農始めたての頃は、どうしても草が生えていない場合が多いですから、野菜の芽を食われてしまうんです。
で、植物は成長の仕組み上、双葉(最初に出てくる芽)に栄養がギュッと濃縮されています。
彼らの初期成長は、光合成ではなく、双葉に蓄えられたエネルギーによってもたらされるんです。
そのエネルギー源たる双葉をかじられる(壊される)わけですから、その後の成長に大きく影響を残してしまいます。
小松菜など、一度にたくさんの種をまく野菜ならまだ許容できるかも知れないのですが、カボチャとかスイカとか、そんなに種に余裕のない野菜でこれをやられると大変ショックなんですよね。
2021年5月、せっかくきれいに発芽したカボチャの芽たちを1日でウリハムシに食い尽くされたときはかなりショックでした(笑)
その4:種の量
これは失敗ではなく、直まきが難しいと感じているポイントです。
先ほども書いた通り、うちの畑は7,000㎡以上あります。
なので、特に筋まきやばらまきをしようとすると、膨大な量の種が必要になります。
種と種の間が5~10mmだったりしますから、そりゃもう大量です。
自家採種をして数年とかなら、自分のところでたらふく種を確保できているんでしょうが、まだ失敗ばかりでろくに育てられていない段階では、種は買ってこないと行けないんですね。
そうしたときに、
7,000㎡をカバーする種の量ってどのくらい?それっていくら?
というあまり考えたくない現実にぶつかります。
しかも、種を用意できたとして、間引きの手間もありますから、作業量が途方もなくなる。
で。
ここまで紹介してきた
- 水管理
- オケラ
- 小さい芽をかじられる
- 種の量
を割と広く解決してくれるのが育苗だったのです。
育苗のメリット
以下の話は、セルトレイ・ポットでの育苗を前提にしています。
後述しますが、露地育苗はオケラ問題が残るので、やっていません。
1:水やりが楽
72穴や128穴のセルトレイで育苗しますから、水やりが超楽です。
ジョウロでもホース(+シャワーノズル)でも、セルトレイ1枚にかかる時間は30秒もないでしょう。
単純計算で、セルトレイが20枚あったとして、1枚30秒であれば、
30秒/枚×20枚=600秒(5分)
あっという間です。
それに、限られたスペースで管理できますから、直まきのように距離を移動する必要もありません。
畑で風が吹いていても、セルトレイを風の当たらないところで管理していれば、全く問題ありません。
この点だけでも、育苗をする価値は十分にあると思っています。
2:虫の心配がない
先ほど「オケラ問題」「小さい芽をかじられる問題」を挙げましたが、これら問題の心配もなくなります。
セルトレイにオケラは入ってこられませんし、育苗場所を選べば虫にかじられることもありません。
▲露地育苗はオケラにやられました!笑
3:種の節約
あと、先ほども書きましたが、育苗だと1つ1つの芽を用意に管理できるようになります。
72穴でも128穴でも、発芽成長の様子をひと目でチェックできる。
ので、基本1穴1粒の種まきで済みます(発芽率や品種によって2~5粒)。
つまり、
苗72本→種72粒
苗128本→種128粒
でOKなのです。
これが直まきになると、先ほど散々書いたように様々なリスクに晒されますから、リスク回避の観点からある程度の数をまかないといけません。
そうなると、苗72本→種72粒では絶対に済まないんですよね(間引きもありますし)。
だから、育苗は自然農初期の種の節約にもなると考えています。
育苗のデメリット
今の私にとって、
メリット>>>>>デメリット
なので気にせず育苗していますが、もちろん多少のデメリットや難しさがあると思っています。
以下、私が現在考えている育苗のデメリット…?について。
1:環境の用意
育苗するにあたって、一番ハードルが高かったのが環境の用意です。
つまり、セルトレイやポットをどこに置くか?という話。
家に小さなハウスがあればそれで話は解決なのですが、残念ながら現在のうちにはハウスはありませんでした。
なので、畑に捨てられていた過去のハウスの残骸を使って、育苗ハウスのようなものを作りました。
「ハウス」と呼ぶにはあまりにお粗末な出来ですが、これでも十分雨風を防いでくれます。
冬の僅かな日差しでも、ビニール内は外気+3~5度くらいになってくれるので、生育適温に近づけやすいです。
あとは、ベランダで育苗する方法もあるのですが、セルトレイ数十枚の育苗を室内で行うのは無理があるので、うちでは行っていません。
この環境を整えられてからは、育苗がすごく、というか劇的に楽になりました。
が、この環境がなかったら、今でもそんなに進んで育苗に手を出していたかどうか微妙なところです。
なので、環境を用意できるかどうか?は非常に大きな問題だと感じています。
そこそこな面積の畑を管理するのであれば、小さめのハウスを購入・設置して良いと思います。
ジョイフル本田で見たものは、写真のよりも大きなハウスで3万円程度でした。
その程度の投資で、直まき失敗の悩みが減るのであれば”買い”です(笑)。
2:プラ用品を使う
ハウスもそうでしたが、セルトレイやポットといったプラ製品を使うことが、若干自然農の王道からは反れてしまうかな?と思っています。
もちろんいずれは、露地に苗床を作って育苗なんてのも考えています。
が、今は収穫まで至る回数が少なすぎるので、その段階を突破するために使えるものはどんどん使おうというスタンスです。
とはいっても、なんでもかんでも買っているわけではないです。
先の育苗ハウスも畑に捨てられていた残骸を使っていますから、0円です。
この写真のセルトレイも、過去に家で使われていたものたちです。
地面に敷いてあるじゅうたんもそう。
セルトレイの乗っている木材も、家の前で工事していた人たちから譲ってもらったものです。
なので、極力新しい物を買うということは控えるようにしています。
、、、ですが、じゃあそれと同じことを他の人ができるかというと、そうは思っていません。
私はかなり環境に恵まれていると思います。
ですから、足りないものがあるときは、必要に応じて購入してしまって良いと思います。
セルトレイもポットも10年以上使えますからね(笑)。
3:水やりの技術
これはまだ私も学習中なのですが、育苗は水やりに技術が必要(らしい)です。
というのも、水をやりすぎると、植物の根が軟弱貧弱に育ってしまう(らしい)のです。
そして、根に適度なストレスを与える水やりを行えると、強靭な根が出来上がる(らしい)です。
先ほどからなぜ(らしい)を連発しているかというと、まだ自身の目で確認できていないからです^^;
ただ、農業関係の書籍だと一般常識のようにこう書かれています。
自身で経験できたら、上記の(らしい)は取れるのですが、それまでは自戒のためにこのような表記にしておきます。
4:定植の手間
昔は手間だと思っていましたが、楽で効率的な方法を見つけた今では、全然手間に感じていません。
その方法が見つかるまでは、セルトレイから取り出して、地面に適当な大きさの穴を開けて…というプロセスが煩わしかったです。
ですが、
- セルトレイからの楽な取り出し方
- 適当な大きさの穴の空け方
- 土の被せ方・鎮圧の仕方
こういうのが動作として洗練されてくると、全く問題を感じなくなりました。
むしろ、直まきで草を刈ったり表土を削ったりという方が、繊細さを要求されるような気がします。
5:直まきとの生育差
無事ある程度の大きさまで育った際、直まきと育苗とでは生育差が生じるようです。
直まきの方が根張りが良いため強く育ち、育苗は一度植え替えを経験するためそれに劣ると。
これもまだ実物を目にしたことがないので、どのくらい差が生まれるかなどわかっていないのですが、育苗中の根を見る限り、生育差は生じそうです。
以下は、育苗中のサラダ菜を観察したものです。
こんな小さな芽に、こんな長い根がついています。
そしてこの長い根が、72穴のセルトレイの中でグルグル巻いているわけです。
最初から地面にのびのびと根を張っている直まきの苗と、
狭いスペースでぐるぐる巻きになってから地面に伸びてく育苗の苗。
どちらが強く育ちますか?
と言われたら、まぁ直まきじゃないの?と思ってしまいますね。
結論
もしあなたが直まきで失敗続きだったら、育苗挑戦してみると結構イケるかも知れません!
あ、もちろん、育苗に向かない(らしい)野菜もあります。
にんじんやごぼうや大根など、根菜類は向かないと言われています。
まぁなんとなく納得できる。
が、現在かぶの育苗には挑戦しています(笑)