炭素循環農法とは、林好美さんが提唱されている考え方(手法)です。
※提唱というと語弊があるかもしれませんが、分かりやすくするためこのように書かせていただきます。
詳細はご本人がWebページにまとめられていますので、興味のある方は「炭素循環農法」で検索してみてください。
ですが如何せん情報量が膨大ですから、こちらのページでは炭素循環農法についてのざっくりとした説明(私の解釈)を載せておきます。
基本的な考え方
いくつかWebページから引用しながら説明していきます(太字はこちらで付けました)。
まず、炭素循環農法の特徴を最もよく表していると思われる記述です。
自然と同じようにC/N比40以上の、難分解性・高炭素有機物(生の雑草・作物残滓・緑肥作物や、C/N比調整・醗酵処理=キノコ培地化した木材チップ等)を土壌中に入れるだけ(耕起・混ぜ込み=炭素循環の効率化)。自然林野では落ち葉や朽木(C/N比40以上)を菌類が最初に分解し、細菌類は二次・三次分解者です。
引用:炭素循環農法(概要)(https://tan.tobiiro.jp/etc/gaiyo.html#j0)
「C/N比(しーえぬひ)」というのは、窒素(N)に対する炭素(C)の割合です。物質の腐りやすさ(腐りにくさ)を表していると考えてください。
- C/N比が低い:腐りやすい
- C/N比が高い:腐りにくい
例えば、スーパーでお肉を買ってきて常温で1週間放置したら腐りますよね。一方で、公園で枯枝を拾ってきて常温で1週間放置しても腐りません。こんな風に、腐りやすそうなものは総じてC/N比が低く、腐りにくそうなものはC/N比が高いです。そして「C/N比40以上」というのは、腐りにくい物質を指しています。
つまり炭素循環農法では「C/N比40以上」である腐りにくい「難分解性・高炭素有機物」を土壌の中に入れなさいと言っています。そうすることにより、それら難分解性・高炭素有機物を「菌類」が分解し始めます。分解というと難しく聞こえるかもしれませんが、要するに菌類がエサとして食べるということです。
木材とか落ち葉とかを、菌類がエサとして食べる。それらはエサですから、菌類が繁殖します(=増えます)。菌類が土中で繁殖することは、植物の生育にとってプラスに働きます。植物は数億年前からずっと、菌との共生関係を築いて生きてきたからです。
菌類は、土の中から植物に必要な養分を探してきてくれます。植物は、光合成で得た炭素分を菌類に分け与えます。この共生関係が密接に行われることよって無施肥栽培(肥料を与えないで作物を育てること)が可能になる、というのが炭素循環農法のざっくりとした考え方です。
あさみえんで行っていること
上記のような考え方をベースに、「おがくず」を土の表層に混ぜています(下写真)。おがくずとは、木材を専用の機械でパウダー状にしたもの。これらおがくずや枯草を炭素分として畑に鋤き込んでいます。
土の表層10㎝くらいに、土と均一に混ざるように入れています。面積が小さければ四本鍬で、大きければ耕運機で混ぜ込みます。
これは一般的に「耕す」という行為に当たるため、「耕さない」を掲げる自然農の考え方とはぶつかるところです。
また、世間一般の農家が「耕す」というと、「土をほぐす」的な意味を指すことが多い気がしますが、炭素循環農法では「炭素資材や酸素を供給する」目的で行っているため、そういう細かいところにも差異は見られます。
無施肥と炭素資材
炭素循環農法では「無施肥(むせひ)」を説いています。無施肥とは肥料を与えないことです。
土中に入れるのは「難分解性・高炭素資材」だけで、肥料となるものは与えないと説明されています。
ですがここで疑問に思うかもしれません。
この「難分解性・高炭素資材」は肥料に当たらないのか?と。何を隠そう、これを書いている私自身が過去に同じことを思いました。そちらの疑問に対して、やや分かりやすい説明があったため最後に引用しておきます。
雑草や緑肥作物で大気中の炭素を固定したり、廃棄物扱いされている高炭素(木質系、草本系)資材を鋤き込みます。しかし、この炭素は微生物の餌(主にエネルギー源)であり、作物の肥料ではありません。また、あくまでも炭素供給が主目的、窒素ではないのです。ですから土を痛めるマメ科の緑肥植物は使いません。作物の必要とする窒素などの養分は自然状態と同じように、その炭素源を使う微生物に一切を任せます。
引用:地球を壊さない有機自然農法の基本(https://tan.tobiiro.jp/kihon/kihon5.html)
要するに、
肥料とは作物に直接作用するもののこと。一方で「難分解性・高炭素資材」は土中の微生物のエサであり、作物に直接作用するものではなく、作物に必要な養分は土中の微生物が賄ってくれる
ので「難分解性・高炭素資材」は肥料に当たらない、という説明です。